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April 11, 2004

『徴候・記憶・外傷』を読んで#1

 中井先生は阪神大震災に遭い、精神分析医を組織して被災者のサポートを行うと同時に震災後のPTSDの問題にも取り組んだ。PTSDは阪神大震災という出来事への対応というだけではなく、専門とする分裂病治療にも活かされることになる(ちなみに『徴候・記憶・外傷』 の外傷とはトラウマのこと)。

 まず、記憶に関しての議論との関連だが「外傷性フラッシュバックと幼児型記憶との類似性は明白である」(p.53)。どちらも二度とは同じ危険にあわないための、事前避難のため視覚的イメージだという。

 分裂病との関連だが幻聴などによって、分裂病と診断されたものの、薬が効かない場合には、外傷(トラウマ)を疑った方がよい。つまり、幻聴と思われるものが、聴覚性フラッシュバックである可能性が高く、大声を発することも幻聴に対する自己対処方法だという。

 しかし、30年前には日本で外傷(トラウマ)に関する知識はなく、分裂病として間違った治療を行われてきた例も紹介され、深刻な問題なんだな、と蒙を啓かれた。

 個別の議論では、レイプの被害者は、成人となった後、男性と「同情結婚」する場合があり、「同情する夫が性的に迫れば『不潔』と退け、遠ざかっていると『冷たい』と罵ることによって、夫の立つ瀬をなくし、支配する」(p.107)という"ヒリステリー結婚"に陥ることもあるという例は「いやー、なんとも」と思った。

 また、幼児型記憶は断片的だが、これは二歳半から三歳にかれて行われる大きな記憶の再編成の後に「成人文法性の成立に合致するような」(p.50)混乱が生じないものだけが残ったものだという。成人文法性(adult grammaticality)は生得的なd構造(深部構造)であり、どんな原始的な生活を営んでいる人間集団の中でも見出され、人間の三歳児以前の片言のような言葉しか話さない部族はまだ見いだされてないというような議論も面白い。

 「解離は拷問、虐待そしておそらく死の場合にも駆けつけてくれる救済者であるが、将来まではおもんばかってくれない」(p.110)という一文にはしびれさせてもらった(解離とは離人症のこと)。

 参考文献としては『春の祭典―第一次世界大戦とモダン・エイジの誕生』Modoris Eksteins、金利光翻訳、TBSブレリタニカを読んでみようかな、と思った。

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