« 『看板建築』 | Main | 神田B級グルメガイド9「ステーキyoshino」 »

March 25, 2004

『だめだこりゃ』

『だめだこりゃ』いかりや長介、新潮文庫
それにしても、ここ1ヵ月ぐらいの人文関係の新刊書は寂しい。毎日、仕事が終わり、恵比寿で飲む前に、六本木ABC(青山ブックセンター)をひと回りして、アタマをリセットするのが日課になっている。六本木ABCは、もう15~16年はフランチャイズにしているだろうか。そんなに広くないインチメイトな空間ながらも、実質的には大型書店と変わらない品揃えをする。翻訳家の柴田元幸さんは、自身の臨時コーナーが出来たとき「日本一の書店」だと書いてたが、本のキュレーターともいえるような店員さんに支えられている素晴らしい書店だと思う。

いつも六本木ABCに入ると、まず向かうのが中二階の人文、歴史コーナー。それから科学、文庫、新書、2階の芸術コーナーとまわって、だいたい1冊買って帰る。

しかし、人文コーナーで最後に買ったのは【今日読んだ本と聴いた音楽をひたすら記録するスレ#4 】にると、2月13日の中沢新一『対象性人類学』が最後だ。個人的には手が伸びるような本に出くわさない。ノースロップ・フライ『神話とメタファー』も寄せ集めの論文だしなぁ、みたいな。

ということで、昨日の帰宅の友は『だめだこりゃ』いかりや長介、新潮文庫。
damedakorya.jpg

六本木の事務所のそばに「る・ぽーる」という昔ながらの雰囲気の良い喫茶店があって、20日に72歳で亡くなったいかりやさんがよくコーヒーを飲んでいたのを見かけたことが思い出されたからだ。

旧ドリフターズから小野ヤスシさんなどドンキー・カルテットが抜け、一瞬、いかりやさんと加藤さんだけになってしまったという事件は知っていたが、仕事をこなすために残りの3人を一週間ぐらいで集めたというのまでは知らなかった。

その後の新ドリフターズの動きを荒井注さんが抜ける前と後で分けて書いているんだけど、圧倒的に面白いというか、思い入れが入っているのは荒井注さんが在籍していた当時の話。志村けんさんが入った後は、「私という強い『権力者』がいて、残りの四人が弱者で、私に対してそれぞれ不満を持っている、という人間関係での笑い」から「志村加入後は、人間関系上のコントというより、ギャグの連発、ギャグの串刺しになっていった」(pp.104-105)からだ。

荒井注さんが在籍していた当時、5人の人間関係という枠を設定することで、探検隊から国語算数理科社会までの無限のバリエーションが開けたんだな、というのが改めてわかってくる。そして、言外にだが、志村さんが入った後のドリフターズは、「志村は自分のネタ会議を持っていたし、彼が徐々にイニシアチブを取っていくことは私も容認していた」(p.202)とはいうものの、一時は50%を超えていた視聴率が10%台に降下する中、いかりやさんは番組づくりの大本のネタ会議(木曜会議)から外され、やがて番組も終了してカトケンがスタートすることになる、というのは「そういう流れがあったんだな」と改めて思う。

もっとも、いかりやさんはパリヒ(引っ張り)は15日前までに話をつければOKというバンドマンの世界で生きていたことだけに、まったく意に介せずという感じで書いているのが読後も爽やかだ。

ビートルズの前座をつとめ、ひとこと「退却!」と言っただけで逃げたたくだり、クレージーキャッツのハナ肇さんに酔っ払って即興でつけられた名前が芸名にされてしまったくだり、アボット&コステロが好きだったというくだりなども忘れがたい。

合掌。

|

« 『看板建築』 | Main | 神田B級グルメガイド9「ステーキyoshino」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/350107

Listed below are links to weblogs that reference 『だめだこりゃ』:

« 『看板建築』 | Main | 神田B級グルメガイド9「ステーキyoshino」 »