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March 21, 2004

『胎児の世界―人類の生命記憶』

『胎児の世界―人類の生命記憶』三木成夫、中公新書691

 ライアル・ワトソンよりもアカデミックだし、よほどラジカルに感じる。「三木学」としかいいようがない世界を確立している。

 生命潮流を原初の体軸を垂直にした植物のような無脊椎動物(ホヤの幼虫)に求め、口から尾っぽの管の各所にとぐろを巻いた"たまり"ができて内臓ができるという話(p.55)からワンダーランドがはじまる。そして、古生代の二度にわたる上陸の試みが、魚にも刺青のように残っていて、それは鮫以外の魚が持っているウキ袋(空気呼吸の営みの記憶)であるという指摘から、だんだん物語はスピードアップしていく。
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そして、こうした生命の記憶は人間も受精卵からヒトとして出産される間にも反復され、胎児がラブカ、ムカシトカゲ、ナマケモノなどの「古代の面影」を反復しながら成長していくという指摘には震える。有名になった、そして胎児が水棲型から陸上型に変わる時というのは、ニワトリの卵も不活発となり、人間の妊婦の「つわり」もひどくなるということは、いかに鰓呼吸から肺呼吸への転換が一大事業だったかという指摘につながってくる。忘れられないのは、胎児の顔を見るために、標本の首をメスで切る描写だ。

 さすがにホルマリン漬けではあるものの、胎児の首を切ることに生理的な拒否反応を示していた自分を「おまえは、ほんとうは、この無傷の標本をこわすのが惜しいのではないか…」(p.105)と励まし、いざ切断してみると、ゴマ粒の頭部がこっちを見て、その顔が「フカだ!」息を呑んだというシーンは、描写自体がすごすぎる(p.106)。

 細胞の原形質のレベルで一週間という単位で脱皮が行われるから、ユダヤ人が7日目を完全休養日と定めた習慣が広がったという話も納得的だ(p.180)。「解剖学」と「形態学」から成る「三木学」は、この本以外にも、両生類までは首が廻らず、「振り返る」ことが出来ないが、哺乳類は後ろを振り返る、「追憶」が可能になったという指摘や、内臓は不随意筋でできているため意識して表情を作り出しても、ウソがばれるなどのセンス・オブ・ワンダーに満ちている。

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