『中国史とつなげて学ぶ 日本全史』岡本隆司
『中国史とつなげて学ぶ 日本全史』岡本隆司、東洋経済新報社
著者の専門分野である近現代史に留まらず、日本の古代~平安時代のあたりから、中国史を“ポジ”、日本史を“ネガ”として捉える視点から解説してくれます。
日本の古代史以前の流れとしては、4世紀の地球の寒冷化で西洋世界で民族大移動が起こった同時期に、 中国でも遊牧民などの集団が徐々に流入し、ユーラシアでは寒冷化の到達点として唐とイスラムの両帝国が成立。しかし、温暖化の進展とともに多元化が進行する、といった大きな歴史の流れが提示されます。文明の発達状況、気候変動、人口動態、国の統治能力みたいなものも考慮に入れた一般向けでありながら、スケールの大きな歴史書です。
強調されているのは中国社会は歴史的に多元的であるのに対し、日本は凝集的という違い。ほぼ農耕民のみで構成される日本は国としての一体性も昔からある程度持っていた、と。
日本は、外国からの知識を抵抗なく取り入れ、自分風にミックスしてしまう一方、中国では、外から入ってきた知識も、中国の古典と結びつけて説明しなければ受け入れられなかった、と。開国後の日本は和魂洋才で貪欲に西洋の知識を取り入れますが、中国では、いったん中国古来の概念に引きつけて理解しなければならない中体西用の方針をとっていた違いも大きかったようです。
このため西洋から国民国家の概念が流入すると、割と一元的な社会だった日本は簡単に国民国家の形成に成功します。
この成功をみて中国でも国民国家を目指す勢力も出てきますが遊牧民と農耕民のハイブリッドである中国では様々な困難が立ちはだかります。一方、日清日露戦争の後、帝国主義的な多元国家を作ろうとした日本は崩壊するみたいな流れ。凝集的な日本が対外的に肥大化しなければならなかったというそのプロセス自体に問題があったのではないか、と示唆されています。
政治的な話しだけでなく経済でも、日本の貨幣経済の発達は中国との貿易が契機となったものと説明。対中貿易に必要であった銀が枯渇することによって、代替手段として日本の国内産業が発展したというあたりもポジとネガの関係であり、日本の中世の経済発展は「湖広(ここう)熟すれば天下足る」の影響だったというあたりもスケールの大きな議論です。「湖広熟すれば天下足る」とは、明代から清代の中国において、長江中流の湖広地方(現在の湖北省・湖南省)が米の巨大な食料供給地となり、周辺地域はそれを支えるというエコ・ネットワークも形成されますが、日本もそこに参加していた、と。
それまでも銀貨が必要になった中国に銀を輸出することで、日本は贅沢に目覚めたのですが、その後、モンゴルで紙幣が発達したため、銭が余って日本に輸出されるようになるなど、日本は翻弄されます。
卓越した文化を持つ中華から影響を受け、遥かに遅れた時代区分を経る日本という構図は江戸期までは変わらず、太古の中国正史から歴史事実を引き出ことは無益というクリアカットな指摘も新鮮でした。
姉妹本の『世界史とつなげて学ぶ中国全史』も読んでみようと思いました。
後は箇条書き的に面白かったところを紹介します。
・中国の正史は都合よく書かれているので、漢委奴國王も五王の記述はそれほど信用ならない
・明にとってモンゴル帝国を撃退した日本から朝貢を受けることは、天子を宣明するのに都合が良かった
・戦国大名は、在地の武士が守護を支えることができるような存在に成長したとも言える
・室町時代まで京都以外の都市はなかったが、江戸期以降、京都以外の都市が増える
・洋書の翻訳は漢語を元にしないと複雑な内容を表現できなかった
・福沢諭吉は漢文も英語もそれほど上手くなかった
・梁啓超は日本で君主制でうまくいっていることをみて革命派と対立してしまう
・辛亥革命から変わっていないのは反日
・一体化日本と多元化中国は、実際には多元化日本、一体化中国になってる?
・日本は望んだことではないが中国に影響を与え、中国のあり方をネーションステートに変えてしまった
・中国人は「日中戦争で悪かったのは日本の一部のエリート層」と言うが、それは中国社会を反映したもの
・韓国は南北に分かれてネーションステートすら完成していないが、中国も習近平のようにまだ途上にあるとの認識が続いている
【目次】
まえがき──東洋史から日本史を捉えなおす
第一章 日本史は中国の“コピー”から始まった 【古代~平安時代】
第二章 アジア・システムからの離脱 【平安時代~鎌倉時代】
第三章 「日本全体が入れ替わった」時代 【室町時代~戦国時代】
第四章 「国家」の成立 【江戸開府~元禄・享保時代】
第五章 「凝集」する日本 【享保時代~開国前夜】
第六章 開国と日中対立の始まり 【幕末~明治維新】
第七章 朝鮮半島をめぐる外交と戦争 【明治時代】
第八章 アイデンティティの破滅へ 【大正時代~昭和時代初期】
結 現代への展望
あとがき
文献リスト【主な内容】
まえがき──東洋史から日本史を捉えなおす











































































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